きっとこんな作品もメディアに出たら「超鬱」
とか「石原さとみがヤバすぎる」みたいなやっすい言葉でラベリングされちゃって消費されるんだろうな。
石原さとみがここまでの演技ができるとは大変失礼ながら全く知らなかった。「怪演」とは決して表現させないという覚悟を持った非常にリアリティを持った「そこら辺に居そうな人感」とそんな人が悲しみに打ちひしがれてゆく様のギャップが非常に素晴らしかった。随所で悲しみの波がどっと押し寄せ壊れかける瞬間がこの作品の見せ場になってしまっているのもこの作品が提起する我々のスペクタクル依存なのだろうな。警察に相談に行っても隣の音声の方が大きく聞こえてしまい、ビラ配りも日常の背景へと飲み込まれていく様は素晴らしかった。ところどころ彼女が着ている"Everything will be fine"のTシャツ皮肉すぎて笑ってしまった。
また弟役の森勇作の演技も賞賛に値するだろう。同監督作品『空白』では古田新太と松坂桃李の演技が印象的だったがここまで来ると監督の演技指導が余程優れているのではないだろうか。中村倫也演じるテレビDも「アツさ」と理想論だけで全く昇進できてないのも良い。
だが、最後ガラスの欠片に太陽光が通って虹のようになって感動ピアノがなるあのシーンだけは個人的に頂けなかった。1番この作品がやってはいけない「お涙頂戴」だったと思う。
