わに

ミッシングのわにのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.5
人が泣くし、なんなら泣き叫ぶ。メディアは腐敗している。映る大人たちは何も分かっていない。
でも、お金を払って映画を見ないと「メディアが腐敗している」ことをわからないほど観客はバカじゃないことを吉田監督はじめ、製作サイドはわかってやっている。

だから、石原さとみやドジな新人ちゃんは簡単に号泣するが、例えば妻が壊れていく過程でもホテルでタバコを吸うとき青木崇高は静かに涙を浮かべるし、何より美味しそうにタバコを吸う。みうちゃん失踪事件のほとぼりが冷めた頃に、未だ駅前でビラ配りをしている夫婦を見ても中村倫也は叫んだりしない。

人は「こんなにうまくいくわけねぇじゃん」という展開に冷めるけれども、「こんなにうまくいかないわけねぇじゃん」と思ったときにも冷める。

僕みたいなろくでなしは弟が姉に謝った後にカーステからBlank(空白?!)のご機嫌な曲がかかって、しかもその歌詞が「Always think abou you」というどうしようもなさが見たい。(作曲がthe chef cooks meというのも面白い)

自分の娘のために赤の他人の子供のビラ配りをするけども、案の定の犯人で、無事子供は保護される。人が生きてて起きることなんて、"そんなもの"なのだ。

もう一度言う。
「こんなにうまくいくわけねぇじゃん」
「こんなにうまくいかないわけねぇじゃん」
メディアの腐敗だのなんだのを分かってないほど、観客はバカじゃない。
視聴率がどうたらとかでテレビ局はへんちくりんな編集をするかもしれないが、だからといってそのテレビ局の照明がいたずらに暗いなんてことはないのだ。結局、ダメな映画は同じことをしているのだ。
『新聞記者』へのあまりにもスマートな5年越しのアンサー。
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