つぐみ

ミッシングのつぐみのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.9
待ってました〜𠮷田監督最新作!!敬意を込めてちゃんとつちよしの𠮷田で記載させていただきます!!

第一報ではなんでさとみ…ついに権力に阿ってしまったの…と思ったけどさとみから猛烈なラブコールがあったのね。そこらへんのやりとりは多数インタビューになっているし、主にさとみからの論点で発信されてるけど、個人的には監督の視点が一番刺さったのでぜひこちらを。

https://maidonanews.jp/article/15252871

自分に飽きていた、私を壊して欲しいと懇願してきたさとみに対して当初監督が思っていたことがオネストすぎて最高です笑

「彼女には彼女なりの苦しみがあるのはわかるけど、それでも俺の周りには台詞ひとつ勝ち取っただけで大喜びするような売れない役者がめちゃくちゃいるので、余裕がある人間の気まぐれにすら聞こえちゃうわけ。」

いやそうなんだよね!!でもこれって多分ディカプリオもブラピもシャラメも直面したであろう課題よね、「アイドル俳優で終わりたくない!」って。だからってインディ系やサブカル系を自己実現のダシにしないでよ、こっちの領域侵略してくんなよ独禁に反してるぞという言い分も至極真っ当。


確かにさとみはすんごい頑張ってたし大化けしたと思う、「正欲」のガッキーよりはずっと壁ぶち壊してました(「違国日記」の予告編、演技正欲とドンかぶりでわろた)、よくホリプロが大事な大事なお姫様に失禁シーンとか許したね、現場の緊迫感が想像できます。いうてシンゴジラと、バトンを渡された珍映画しか見てないけど、すごい振り切り方をしたもんだなと。ただ、産後のまともな状態じゃなかったことは私も経験からめちゃくちゃ共感するけど、やっぱ𠮷田作品の人にしては演技が過剰、過多だなとは思った。これまでのイメージを覆すものではあるけど、周囲の「引き」の演技、なんならお膳立てで成立してるものだとは理解してほしいよね〜(誰に?)

「空白」に次いで、安易な結論への帰着を許さない物語。美羽ちゃんがどうか無事でいてほしい、再会できた時に生じるしこりや澱に向き合う辛さもあるかもしれないけど、絶対生きてるよ、信じてるし信じたい。

夫婦の温度差と言うけど、明らかに真っ当なのは崇高サイドで、無理解、不寛容な紋切り型の夫描写なしないあたりに、監督が批判を目的にしていないことがはっきりと分かる。マスにせよソーシャルにせよメディアを叩くことは簡単だし、観客にも一番手応えのあるカタルシスだけど、溜飲下げるだけでナラティブとしての説得力ないもんな。
一方で「虎舞竜…」ってなっちゃうのは、ソーシャルでいじられる格好の餌になることへの懸念でもあって、佐々木〜!!やるやんけ〜!!となりました。やるやんけは監督に対してだし、そもそもあいつは佐々木ではない!!でも佐々木の印象で見てるの!!細川岳さんを!!いやほんと佐々木コンビが尊い!!森優太さん、あのつぶらな瞳がどんどん伝染るんですのカワウソくんみたいになっていく様が白眉でした、これを機にもっと佐々木も見られてほしいぜ。みんな見てね!!

白眉といえば小野花梨ちゃんの仕事できない女子、リアルすぎる!!仕事できないって大雑把に言っちゃうけど、勉強ができないわけではないのに自分の頭で考えることができない、こっちが質問したら「○○だと思います」って絶対語尾を断定にしてくれない、さらには「上司に確認します」ばかりで「あんたに聞いてんねん〜」ってこちらの求める以上のアウトプットを一切返してくれない、暖簾に腕押しな人いるんだよ〜〜ウウウ。

そして誠実で倫理観を持ち合わせた、でもいちサラリーマンでしかない中村倫也さんも非常によかったです、作品の良心だよね。

世武さんの音楽も控えめですごくいい、主題歌にこれなんだ、というはずし方もうまい。先日はシェリダン、マクドナー、濱口の新三大を定義しましたが、濱口の代わりに𠮷田でもいいかもね。でもやっぱ最終的には「空白」の方が好きだな〜となってしまったのでこのスコアで。
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