琥珀

ミッシングの琥珀のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
5.0
『特段歪んだ思想や強い憎しみを抱いているわけでもないごく普通の人間でも、自ら考えることを停止し、上から言われるがまま命令に従えば、巨大な悪を成し遂げてしまうことがある。』

これは、悪の凡庸さ(陳腐さ)というキーワードで表現されるアイヒマン(第二次世界大戦中、ユダヤ人大量殺戮において重要な役割を果たした男…1960年、潜伏先のアルゼンチンでモサドにより、拉致、逮捕され絞首刑となった)についての叙述である。

悪意しか感じられない書き込みを行っている人たちも、〝上からの命令〟という部分が〝炎上圧力〟とか〝悪ノリ〟に置き換わるだけで、自らの思考停止に気付かないまま(或いは気付かない振りをしたまま)巨悪に加担していることでは、変わらない。

面白おかしく伝えるのが使命だと勘違いしたメディア関係者も、極めて凡庸な人たちなのに、巨悪を成してしまうということでは同じ。

愛する人や大切な人を理不尽な事故や事件で失うことの傷みは、どれだけ深いのか。
当事者が負う罪悪感や取り返しのつかないことへの後悔や絶望感。
当事者ではないものができることは、少しでもその傷みを理解しようと努めること、無力なのは分かっていても、決して傷つける側の人間にはならないでいること。

そういう思いがあれば、たった一言であってもどれだけ救いとなるのか。とても心に沁みました。

自分にできることは何かありませんか?
琥珀

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