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ミッシングのピポサルのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.2
当事者でない人間があることないこと勝手に考えて誹謗中傷につながったり視聴率のネタとして扱われたりする。現実世界でも実際に起こっているし、そのなかで自分の見聞きしていることなんてその物事のほんの一部であるということがよくわかる。
弟や砂田、新人記者など沙織里夫婦の周囲の人間の物語も多層的に語られ、一体なにが全員にとっての幸せになるかわからなくなる。真実を伝えることこそが報道の役目だと考えていた砂田は夫婦の懸命な姿や組織の人間になった記者出身の上司の姿、そしてスクープを挙げてキー局に引き抜かれる後輩を見ることで、自分のスタンスが揺らいでいる。グレ気味の少女の父親が今回の事件に関連する形で逮捕されていることを知ったりと、細かい部分に意表をつく要素が散りばめられている。それは単に悪の部分だけではなく、協力の意思表示や不法侵入した弟への許しなどふとした優しさや希望につながることもそうで、このあたり吉田監督っぽいなと思った。沙織里のロングインタビューでボソッと場違いな一言を放ったカメラマンの不破、そこは違うだろと思うものの実は彼なりの優しさが不器用な形で表れていたのかもしれない。
笑っちゃいけないところでつい笑ってしまうようなユーモアのバランスが本当に絶妙で吉田監督らしさが今作も光っていた。
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