うかりシネマ

ミッシングのうかりシネマのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
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このレビューはネタバレを含みます

6歳の娘が行方不明になった夫婦と、それを取材する地方局の記者が描かれる。
主人公である母親は娘が一向に見つからない状況に疲弊し、攻撃的になる。協力的な周囲にすら噛みつき、冷静になっては涙する。

テレビマンの砂田は事実だけを報道しようとするが、事件の性質もあり特集番組は似たような素材しかなく、上司にはよりセンセーショナルな切り口を打診される。そして迂闊な報道のせいで夫婦やその家族にまで実害を出してしまう。
ただ、このパートも面白いことは面白いし、組織での軋轢で正しいこと、真実を追い求めることができないさまを描くのは定番だが、大きな事件を扱い表彰される同僚や局内でのモラハラ、タレントじみたパフォーマンスの強要などは横道すぎて、幼女失踪事件と同じパッケージに入れるべきだったのかは疑問。

離婚に発展するわけでもなく、ただ悪い方向にだけ進み破滅することもなく、容疑者として扱われた人間が逆転して英雄になるようなことも、探すのを諦めて日常に戻ることもない。
番組に進展がなければ夫婦の周りで何かが起きるわけもなく、「無事見つかった」や「無言の帰宅をした」で“終わることが許される”ならわざわざこれを題材にしないわけで、続き続ける苦痛が描かれるであろうことは分かるし、後半からはそういう意味で“ここで終わってもいい”シーンが幾度となく訪れる。
ビラ配りをしながら、大きな事件が終わり、心境の変化で、あるいは何も起きないただの日常を映し……映画を終わらせる強制力としていくつかの選択肢がある中で、決して希望を残しているわけじゃない、これからも同じような苦しみの日々が終わらないまま、人格も関係性も何も変わらないけれど、納得の終わり方だった。

深刻だからこそ全編を通してギャグが多かったのは意外で可笑しかった。