真昼の幽霊

ミッシングの真昼の幽霊のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
5.0
missingには「行方不明の人」のほかにも「(あるはずのものが)見つからない、見当たらない」という意味があり、それは主人公の娘だけのことを指しているわけではないと思う。

全編重いトーンなのに時折小さな笑いを入れてくる。「なんでもないような」のところとか、やっぱあの時代を知ってる人なら「えーと」て思うよね。あそこはちょっと主人公が自分に酔ってるんじゃないか(もちろん悲しみ自体は本物なんだけど)と思ってしまう。でもそこも含めて人間を描いてるよな、というか、こういうところにこの監督の変化球的な誠実さがある。

石原さとみは自分から吉田監督の作品に出たいと熱望してたようで、正直これまではこの人の演技について何か感じたことはないんだけど、中盤のある展開のシーンはすごくよかった。良い意味で本当に「見てられない」。ちなみに、並の映画なら「まあそうなるわな」と思うところだろうけど、話に没頭してたからまんまと自分も乗せられてしまった。

テレビ局についても安易にマスゴミと描写するわけではなく、中村倫也のキャラクターはある意味とてもリアル。全然ヒーローにはならないし、何度か反論されてぐうの音も出なくなってしまう。だから彼が絶対正義ってわけでもない。

カタルシスなんてものはほぼない映画だけど、終盤には、“missing“だったものが光を透かして見えてくる。吉田恵輔の映画作家的な成熟が感じられる傑作。控えめだけど実に絶妙な世武裕子の音楽も最高(Apple Musicにあるよ)。

こういうの観ると日本映画がダメってわけでもないし日本の俳優がダメってわけでもないと改めて思う。ただ、一番金持って決定権持ってる奴らがクソなんだ。
真昼の幽霊

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