ゆ

ミッシングのゆのネタバレレビュー・内容・結末

ミッシング(2024年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

嫌なくらいリアルに全てが描かれてる映画。
犯人がいるのかも事件発生当初の関係者の動きも結局見つかったのかも分からない。
そこを描きたい訳じゃなく、娘が突如いなくなった家族と報道、世間、つまりは人間というものの終わりの見えない絶望と狂いを淡々と伝えてくるドキュメントのよう。見えた光が光じゃない、むしろもっと深い闇だと言ってくるような映画。

記者の砂田が、弟が実は違法カジノに行っていたという事実を報道すれば沙織里さんと弟さんの溝はさらに深まってしまう考えてくれと上司に言うシーン、報道が事実を伝えることが仕事ならそれは事実だろうと言うシーン、確かにと思ってしまった。それまでのシーンでついた報道の悪いフィルターが娘をなくした家族に肩入れさせてたかなと思った。ただもう少しやりようはあるけど。
上司に断られたあとに砂田がドア越しにぶつぶつと何か言ってるの狂気的すぎて怖かった。

弟の圭吾と車で話すシーン、俺も美羽と会いたいと吐露するところでこの人もきっとすごく後悔をしてそれを言えず苦しんできたひとりなんだろうなと思い辛かった。途中沙織里が圭吾に暴言を送り続けるとこで、圭吾これ自殺しない?大丈夫?と思うシーンがあったけど大丈夫だった。その時の彼にはそれを受け止めるくらいしかできないと思ったのかな。

俳優石原さとみのお芝居凄かった。娘が失踪した可哀想なお母さん役かなと思ってたら違う。序盤の舌打ちから突如の奇声、娘がいなくなってからの時がきっとそうさせたんだろうなと思うような、ただやつれていくだけの母じゃなくて、リアルな嫌な感じも出してくる。それを嫌だと思ってる時点できっとこの夫婦の辛さには寄り添えてないし、子供もいない自分には本当に経験しないと分からない想像を絶する感情や苛立ちや辛さがあるんだろうと思った。別の失踪した娘が見つかって良かったねというシーンも印象的。感情がオーバーになり、やりすぎると芝居臭く感じそうなこの役を違和感なくそこに生きてる人として観客に魅せさせるのが凄い。さとみちゃんが沙織里を自身に落とし込んで演じたからこそこの映画がリアルなものになってると思う。

映画館を出て子供を連れた家族を見ると胸がちょっとうっとなるくらいにはしんどい。
ゆ