千年女優

ミッシングの千年女優のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.0
幼い娘が失踪してから三か月を迎える母親で、藁をもすがる想いで地元テレビ局の記者からの密着取材を受ける沙織里。失踪時にアイドルのライブに参加していたことを世間から叩かれ、テレビ局上層部からは弟の挙動不審を疑われ、落ち着き払った態度を見せる夫とは仲違いが絶えずと様々な困難に焦燥する彼女の姿を描いたドラマ映画です。

キャリアを通じて複雑な人間感情の機微にアプローチし続ける吉田恵輔が新型コロナウイルス流行による緊急事態宣言中に執筆を始めた脚本を映画化した作品で、スター女優で第一子出産に伴う産休からの復帰となる石原さとみを主演に据えたことで話題を集め、かねてより吉田作品への出演を希望していた彼女の新しい一面を引き出しました。

『由宇子の天秤』らに通じる真実の「曖昧さ」に翻弄される様を描くも、監督の得意とする「曖昧だった感情を具現化する」作風とは真逆で相性の悪さを感じます。物語のため固定化され過ぎた人物像は不自然で主題の「想像力の欠如」もありがちとらしくないですが、持ち味であるキャストのアンサンブルを演出して成立させている一作です。
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