ShojiIkura

ミッシングのShojiIkuraのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.8
 キラキラ女優石原さとみが、心身ともにボロボロの母親を演じる。その演技の凄まじさに、圧倒される。
 鬼気迫る「失踪した子どもを探す母親の感情」に翻弄され、見失いそうになる。夫への気持ち、弟への気持ち、母の母への気持ち、誹謗中傷するSNSへの気持ち、職場の同僚への気持ち、メディアへの気持ち、警察や自治会への気持ち、登下校する小学生への気持ち、同じように子どもが失踪した家族への気持ち…どの人たちに対しても暴走してしまう母が、最後の、同じ境遇の家族に対してのみ、「共感」という同じ卓上の気持ちを通わせ、それを知った夫は涙する。自らの事は何も解決していないのに、共感できる感情があった事が、この作品の中で見えた唯一の救いだったという事か。
 作者が意識したかはわからないが、個人的に彷彿させたのは神奈川のキャンプ場で起きた子どもの失踪事件だ。その他にもこのような事件は少なからずあるかもしれないが、当事者の親たちはあの時、そしてその後、どのような感情でいるのか?この作品のような感情だとしたら、辛すぎる。
 最後に救いはあったが、ほぼずっと辛い気持ちにさらされる。そんな映画観たくないという人にはお勧め出来ない。時に人は共感が辛いと感じる事があるのだと知った。
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