Kapporiya49

ミッシングのKapporiya49のレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.5
真実が面白い。

私自身、定期的に世間を賑わした事件のニュースを探し、ルポ本を買い、ドキュメンタリーを観る。そして事件に進展が無ければ忘れる。

主役夫婦は娘を失っただけでなく、3ヶ月経っても2年経っても失い続けている。
時間を経れば、被害者家族であること、駅前でチラシ配りすることに慣れてしまうのかもしれない。被害者家族であることを内面化してしまうし、警察やマスコミにアピールしたりも必要になるかもしれない。
このタイトルはこう考えると本当に芯を食っていて絶妙。

本作では、愛する娘だけでなく、現在進行形で色々なものを失い続けていてクソ辛い主人公を演じる石原さとみがとにかく凄かった。

監督が各所インタビューで彼女の演技を「エチュード」=即興劇的に役を憑依させて演じていると表現していて、正に彼女の真実味のある演技が観てるコッチが心配してしまうほどイカれ気味で、ちゃんとメンタルケアしてネとさえ思ってしまう。

しかし、裏の主役といっても良いくらいの真実味を感じたのは、森優作演じる彼女の弟。
こういうどうしようもなくIQが低い人って世の中にたくさんいるし、時にホンモノの事件でもこういう人が警察の捜査を意図せず撹乱したりする。私自身もこの弟に近い面はあると自覚するところもあり、彼の存在がとてもキツかった。

じゃあそんなに辛くて重い映画なのかというとそうでもなく、要所要所でユーモアがあり笑いを誘う。

本作で感情的なヤマ場は幾つかあるけど、あの「虎舞竜」のシーンは一瞬吹き出してしまったものの、その後自分の感情をどう制御すれば良いのか分からなくなるような不思議な感覚に襲われた。
しかし、このシーンの後に更に最悪な警察での展開があるので、そんな感覚はかき消されてしまった。
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