ドルジ

ミッシングのドルジのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
4.1
82点(100点満点中)
〈脚本〉38/45点
 “これは究極の不謹慎ギャグ映画だ!”
 観終わってそう思い興奮していましたが、同じようなレビューは見つからず…。僕の感性が捻じ曲がっているだけでしょうか。
 「僕は事実を報道したいんです」「その“事実”が面白いんだよ」。このセリフに本作の全てが詰まっていると感じました。そのセリフ自体、石原さとみが警察署で見せる衝撃的演技の直後に発せられるので、あの迫真のシーンが“面白い”ものに見えてくる。石原さとみがヒステリックになっておかしな言動をするのとか、夫婦の言い争いとか、非常にリアルだからこそ“あるある笑い”になっていました。
 特に笑ったのは、主人公の弟が先輩と飲みに行くシーン。「お前が諸悪の根源かよ!」と誰もがツッコミを入れるでしょう。他にも虎舞竜のくだりとか、“笑ってはいけないシリアスな状況で繰り出される絶妙なギャグ”が作中に散りばめられていて、ニヤニヤしながら観てしまった。当然、多くのレビューを見てもわかるように作品全体は非常にシリアスに作られているし、題材も題材なので過剰にふざけては炎上してしまう。あくまでギャグはスパイス程度に抑えているバランス感覚が素晴らしかったです。監督は過去作でもこういう“不謹慎ギャグ”“リアルな人間関係におけるあるあるギャグ”をよく描いており、本作でもその作家性が炸裂していました。
 また、ラストでは“絶望の中に差し込む一筋の光”が提示されており、これも過去作に通じるものがあります。わかりやすいハッピーエンドを用意してくれないのが意地悪だけど、それが良い。僕はなぜかニヤニヤ笑いながら観ていましたが、泣いてる人もいました。しっかり感動できる部分もあるし、余韻もあって素晴らしい脚本でした。僕の感性がおかしいだけ
〈演出・撮影〉21/25点
 本作は俳優陣の演技が素晴らしかったですが、それを引き出すカメラワークの上手さも光っていました。また、巧みな演出でつい笑っちゃうシーンもいくつかあって、素直に「上手いなー」と感心しました。例えば、ガラス越しに悪口言うシーンは2度あって笑ったし、口元が曇るのも画として面白かった。終盤、車の中であのアーティストの曲が流れ出したのには、思わず主人公も「笑うしかない」と言ってましたね
〈音楽〉6/10 点  
〈演技・キャスティング〉9/10 点 
 石原さとみは言わずもがな、夫役の青木崇高、弟役の森優作の演技も素晴らしかった。石原さとみはちょっと過剰演出気味に感じる部分もあったけど
〈印象〉8/10
 やはり吉田恵輔監督は今の邦画界のエースです。今後も追っていきたい
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