イージーライター

ミッシングのイージーライターのレビュー・感想・評価

ミッシング(2024年製作の映画)
3.5
人はあまりにも衝撃的なことに出会うとその様を、「色を失う」という。この映画は色を失った夫婦の物語である。

娘が行方不明になった。まだ小さな小さな女の子である。育児を一生懸命やっていたと自覚している母を石原さとみが演じ、その夫は青木崇高の役である。娘が消えて二人は本当に熱を入れて捜索している。時間さえあれば駅で手がかりを掴むためのビラを配っている。
事故で近親になにかがあると、残されたものはなにかにつけて自分を攻める。母は娘が亡くなった日に、本当に久しぶりにライブに出かけていた。母はずっと罪悪感を覚えている。そして輪をかけるようにその辛さを強くさせるのは、自分の弟、傍から見て頼りない弟に、行方不明になる直前まで、娘の面倒を見させていたことだ。
夫は悪い人ではない。そんな妻を、自分の娘は、もしかしたらライブに出かけなかったらとか、義理の弟に面倒を見させなかったらとかは言わない。しかしその言わないことがかえって妻を追い込んでしまうようである。見ている方にもその何十にも重なった辛さが圧としてかかってくる。

もう一つのドラマがある。小さな女の子の失踪を負う地方局のテレビマンである。真実を追うのが我が使命とみずから追い込んでいる人である。中村倫也に役があてられている。志は立派だが、テレビ局の使命として、視聴率を上げるため、バエル絵作りに手を出さざる得ないときもある。一方で疾走した少女を救い出したいという人道主義と、真実を追うジャーナリズム魂とは両立できない。正しいこととは何なのか、実際の社会でもなかなかに難しい問であることに、彼には良心が存在するだけに、真剣にそのことに向き合わざるを得ない。

二人の夫婦にその弟、そしてテレビマン。少女が消えたことを軸に、どう振る舞いどう嘆きどうもがいてもがききるのか、そんな映画である。

前述の通り辛く重い。また劇的なカタルシスを覚えるような作品ではないが、しかしどこか救いを与えてくれる良作である。