ガルベス

ぼくたちの哲学教室のガルベスのレビュー・感想・評価

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)
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北アイルランドのベルファストにある男子小学校を舞台に哲学を教育の主軸に置いた校長の授業や指導の様を映したドキュメンタリー作品。

プロテスタントとカトリックの宗教紛争による禍根が、薄らいだとは言え遠くない過去に起きた忌まわしき出来事であることを子供達に伝達。
それを踏まえていかに融和していくのか、分かり合えなさを乗り越えていくのかを哲学の学びを通して思考を促していく。
もちろん校長は理知的な人物なのだが、エルヴィス・プレスリーをこよなく愛しユーモアの感覚も持ち合わせていて魅力的。

観ていて感じるのは「自分の頭で考える」ことの重要性だ。
自分と他者との立場や考えの相違を見出し、論破やマウンティングではないその人なりの考えを導き出していくこと。
これはとんでもなく難しいし、めんどくさい。というかやっているようでやっていない。

昔、橋本治の本に「「考える」とは「なにが正しいか」を考えることではなくなって、いつの間にか「なにが一般的か、なにが多数派か」を考えることになってしまっている」と書いてあったのを思い出したのだが、本作の教育的アプローチとは真逆の方向性なんだよな。
どう考えたってこの先は「みんなおんなじ」生き方なんてできないんだから、自分の頭で考える迂遠さを引き受けた方がいいんじゃないのか、と思ったりもした。
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