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ぼくたちの哲学教室のasaのレビュー・感想・評価

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)
4.9
「なんでそう思ったの?」って、問う大人の存在が子どもにとっていかに大事かがよく分かる映画だった。
何か特別な方法があるわけじゃない。その感情、行為に行き着くまでの経緯を、急がずに「一緒に」振り返って整理していくことで問題それ自体は解決しなくても、解決までの糸口が見えてきたり、自分がこれからどうしたら良いか分かったりする。それだけで見えてくるものって全然変わってくる。
途中、家族とか友達との悩みで学校で感情が爆発してしまった男の子が出てきた。その子が「(悲しくなるから)考えないようにしてた」って言ってたのが印象的だったなあ。考えるって、大人でも難しい。しかも怖い。だからこそ、その方法を意識的に子どもに教えていくこと、一緒に考えていくことって大事なんだ。「なんでだろう」と自分や友達に問いかけてみる力、答えがすぐにでない問いを抱え続ける忍耐強さ、そんな問いを粘り強く考えていく思考力、それって人間の本質に関わる部分だよなあ。

何か悪いことをして居残りって日本でもよくあるけど、この映画に出てくる学校の良さっていうのは居残りの時間を使って、それがダメだった理由を教師が生徒と一緒に考えてたところ。例えば「なんで友達を叩いちゃだめなのか」とか。日本の学校っていうと主語が大きいけど、私が思い浮かべる居残りって子どもだけでそれがどうして悪いのか考えさせられる姿。そりゃ人を叩いちゃいけないなんて理屈では分かっても、その時の状況や自分の感情を考慮すると「そうは言ってもさあ」みたいになることはある。そこを一緒に深掘りしていくのが大事なんじゃん、って思った。

終始この学校の取り組みに感激するばかり。懸命に考える子どもたちの姿も愛おしい。だけどその一方で、そう簡単には上手くいかないよね、行ったり来たりしちゃうよね、そうは言っても大人の側も大変だよね、っていう部分まできちんと描かれていて、もうほんとに凄く良い映画だったなあ。
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