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ぼくたちの哲学教室のumisodachiのレビュー・感想・評価

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)
3.8

北アイルランドのベルファストにある私立男子校で実践されている教育を記録したドキュメンタリー。

カトリックとプロテスタントの抗争が未だくすぶっているベルファストについては下記の映画が記憶に新しい。

明るいマッチョの校長を中心に、基本的にはソクラテスメソッドを用いて子どもたちに思考させ、自分自身と向き合う力を身につけさせていく様が、何度も何度も映し出されていく。

親世代(彼らにとっては下手したら祖父母世代)からの対立、お世辞にも治安が良いとは言えない環境。「やられたらやり返せ」という躾を受けてきた子どもも多く、生徒同士の小競り合いは絶えないしストレスを抱えている生徒も多い。それは卒業してからも同じで、少なくない人数の卒業生が自ら命を絶っているという現実が重くのしかかる。

地域の歴史や経済状況が幾重にも積み重なっているそういった負の連鎖を断ち切るには、教育の力は重要だ。校長をはじめとした先生たちは、子どもたちを押さえつけるのではなく、「なぜ?」を根気よく積み重ねて対話をしていくことによって、子どもたち自身に考え行動する力を身につけさせようとしている。

あっと驚く内容が隠されているような作品ではないが、子どもと同じ目線でコミットする重要性や、毅然と処罰を与えないといけないラインを決める難しさなどが克明に記されていくのが興味深い。

強いて言えば、結果としてこういったやり方で効果があった子どもに焦点が当たりがちになるので、全体としてどうなのかがわかりにくいのが難点か。
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