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ぼくたちの哲学教室のhynonのレビュー・感想・評価

ぼくたちの哲学教室(2021年製作の映画)
3.8
先生と生徒たちの、心温まる交流を描いたドキュメンタリー…
と思ったら、もっと深刻で物騒な内容だった。

なんせ舞台が北アイルランド、映画「ベルファスト」でもおなじみのベルファスト。

カトリック系住民とプロテスタント系住民に分かれた居住地域、物理的な壁と心の壁、新英派と分離派、紛争、過激派、テロ、弾圧、教科書に載らない犠牲者たち。
それらを後世にどう伝えていくのか。

そんな独特な背景を持つこの場所で、先生は生徒に何を教えるのか。

教育といえば、大人が、国が、正しいと考えることを、上の立場から子どもに教え込む、覚えさせる、という姿勢になりがち。

でも、この先生は言う。
「正しい人なんていない」と。
先生が教えるのは、考えること。
冷静に、論理的に考えて、よりよい道を、解決策を、自分なりの意見を、見出していくこと。人と話し合うこと。

新しい価値観や、自分とは違う意見に出会ったとき、それを鵜呑みにするのではなく、頭から拒絶するのでもなく、冷静に、客観的に、多角的に、咀嚼して、考えること。
アリストテレスはそれを「教育された精神の証」だと言った。

「自分の頭で考えろ」
街に、新たなメッセージを掲げた壁画が加わった。
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