So

ジュリア(s)のSoのレビュー・感想・評価

ジュリア(s)(2022年製作の映画)
4.2
1つの今と、3つのもしも。
計4つの人生が並行世界で描かれる回顧録。

小さな小さな偶然が、その後の人生をまるで違うものに変える。

あの時、パスポートを忘れていなければ。
あの時、店員とぶつかって本を落とさなければ。
あの時、コインが表を出していれば。

ありふれた、なんて事のない、小さな偶然の出来事が、
全く違う世界線への入り口。

そうして枝別れしたいくつもの自分の人生の、
どれが正しかったのか、どれが幸せで不幸だったのか。
それは決してわからない。

そして、そのどんな「可能性としての人生」も、
一番の幸福ではないし、一番の不幸でもない。

なぜなら誰しもが、無数に枝別れる人生のうちの、
たった一つしか選べないのだから。

その意味で、間違いなく無数にあり得る人生の「もしも」は、
その比較対象としての意義を失ってしまう。

一つ一つの偶然によって選ばされ、変化し続ける人生こそを、
少しでも自分にとって幸せなものに変えていくことが、
生きていくことそのものなんだと痛感させられます。

朝、家を出る時に財布を忘れて一度取りに戻った小さな偶然が、
またひとつ大きく変えたかもしれない世界線。

今の人生を、失敗した、うまくいかなかったと思う人は多いかもしれない。
それでも、無数に存在したはずのもっと不幸な人生よりはマシなはず。

何がこの人生を変えるのか、それを知る術はない
数学的確率予測も、それを推し量ることはできない。
だからこそ、今の、この人生を、愛おしいと思える道を進もう。

決して見ておいて損はない映画、
むしろ人生を俯瞰するための一つの肯定的手段として、
ぜひ見ておくに値する映画だと思いました。
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