Maoryu002

ジュリア(s)のMaoryu002のレビュー・感想・評価

ジュリア(s)(2022年製作の映画)
4.4
1989年、17歳のジュリア(ルー・ドゥ・ラージュ)は壁が崩壊したベルリンに向かおうとする。彼女がベルリンに行っていたら?そして、その後に物理学者の青年と出会っていたら?さらには交通事故に遭っていたら?そんな偶然の枝分かれによって生まれる4つの人生が描かれる。

たられば作品は「アバウト・タイム〜愛おしい時間について〜」「ミスター・ノーバディ」「スライディング・ドア」「2つの人生が教えてくれること」「ラン・ローラ・ラン」と良作が多いけど、そんなタイムリープや最近のマルチバースとは一味違い、見劣りすることもない温かい作品だった。

人生の可能性は無限で、ささいなきっかけで変わるだけじゃなく、周りの人たちの人生も変えてしまう。そんな当たり前をドラマティックにエモーショナルに見せてくれている。

複数の人生をパラレルに見せる作り、別の人生への自然な映像の切り替えが気持ちいい一方で、途中から今はどのジュリアだ?と頭がフル回転。
ちょっと注意して観察すれば、ジュリアの服装と表情が、しっかり現在位置を教えてくれる。ジュリア役は「ブラックボックス:音声分析捜査」に出てたルー・ドゥ・ラージュ。メイクはハリウッド大作のように精巧ではなくても、見事にジュリアを演じ分けた彼女が素晴らしかった!
加えて近年、「オフィサー・アンド・スパイ」「デリシュ!」と姿を見ることが多いグレゴリー・ガドゥボワの温かく、人間味のある存在感も大きかった。

ただ、ここまで分岐させると、明らかに2時間じゃ足りない。ガブリエルの子どもたちとの関係も描き足りない印象だ。

以下、ネタバレあり。

教師になったジュリアが現実で、あとは妄想と考えるのが自然だろうけど、精神を病んで追い込まれてたジュリアが救急車の中で娘に言った、“大丈夫よ” という一言が、作品全体を代弁してように思えた。あのジュリアのその後は観たかったなー。

終わってみると、ベルリンに行ったジュリアは父との関係を再生し、事故に遭わなかったジュリアは子供との絆を取り戻し、ポールに会わなかったジュリアは孤独から抜け出し、現実であろう事故に遭ったジュリアは後悔と自己嫌悪から解放されている。
どんなにつらい出来事があっても、必ず幸せになれる道はあるという、少し緩いポジティブさが凄く好き!
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