いち麦

奇妙なことのいち麦のネタバレレビュー・内容・結末

奇妙なこと(2022年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

(イタリア映画祭2023)
またしてもロベルト・アンドー監督の、笑いとシリアスさをコラージュするような離れ技的創作が圧巻。イタリアの劇作家ルイージ・ピランデッロ(1934年にノーベル文学賞を受賞とのこと)がメタ演劇「作者を探す六人の登場人物」を創るヒントとなった故郷シチリアでの体験物語とするフィクション。2人の埋葬人…ノフリオとバスティアーノが作るアマチュア演劇の制作過程 3日間のドタバタぶりとカオス化していく初日舞台本番の様子は思わず失笑してしまうコメディだが、これを包みこむ物語は新たな芸術性を模索するピランデッロの至って真面目でやや重たいドラマの様相。そして劇作家と出演者とが対峙する構図が至る所で顔を覗かせる妙味が素晴らしい。
既存の演劇を壊し始めたものの行き詰まりを感じつつある晴れない鬱顔のピランデッロにトニ・セルヴィッロが見事に嵌っていた。また本作での道化師的役回りのサルヴァトーレ・フィカッラが強烈な印象を残す演技を見せてくれた(バッボの言葉がどうして解るんだよ、おい(笑))。件の「作者を探す六人の登場人物」の演出家役でルイージ・ロ・カーショ、俳優役でファウスト・ルッソ・アレジも出演。秀作。
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