しの

ネクスト・ゴール・ウィンズのしののレビュー・感想・評価

3.4
スポ根ものかと思いきや、スポーツが陥る勝利至上主義のマッチョイズムについて言及する話になるとは。異国の価値観に触れてストレスから解放されていくヒーリング映画。反面、話の真面目な部分とスポーツの楽しい部分がワイティティ的ユーモアで軽く流されるのは残念。

映画をワイティティの演説でサンドイッチしてしまう余計さが象徴的だと思う。もちろんユーモアを入れるのは楽しいし、米領サモアの空気感が魅力的に描かれている部分はあったが、話の大事な部分まで茶化さなくて良いのにと思う場面(スマイリーのシーンなど)も幾つか。

サッカーチームとしての成長はダイジェスト的なので、やはり異文化交流セラピーの方に重点が置かれているとみえる。しかしそうなると、終盤で主人公が悲痛な過去について打ち明ける(これがクライマックスなので映画自体がセラピー的構成だ)場面が、種明かし兼演説ネタとして使われてしまうのは惜しいように思う。そしてその後、満を持して「楽しむ」プレイを見せてくれるのかと思えば、これまた全部ダイジェストにしてしまうのはズッコけた。

あと単純に、もう少しチームメンバーとの交流を描いて欲しかった。もっとあの国の文化を知りたくなる。確かに全体的に楽しいし重要なことを伝えているが、悲痛なドラマは最小限かつ効率的に活用し軽いユーモアを優先する作風がちょっと「余計」だとも思うのだ。

スポ根はほどほどに、というテーマになっていくのであれば、映画自体もそういう構成にしても良かった気がする。ワイティティにはどちらかというと、“気持ちいいユーモア”はほどほどに、と言いたい。
しの

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