Breminger

ネクスト・ゴール・ウィンズのBremingerのレビュー・感想・評価

4.6
史実をベースにタイカ・ワイティティ監督が作りあげた作品で、ドキュメンタリーもあるのも今作きっかけで知りました。

しっかり感動しました。コメディ全開なのかなと思ったら人間関係だったりに重点を置いて一本の映画になっていて素晴らしかったです。

序盤ワイティティ監督が直々にこの実話は素晴らしいんだ!でもちょっとオーバーにもしてみたよ!っていう茶目っ気全開のオープニングからニヤッとさせられるんですが、その後の展開もニヤリとさせてくれるものばかりで楽しかったです。

サッカーチームの面々がギャグ漫画かってくらいにポンコツプレーを連発するので、ここをオーバーにしたんだろうなぁと思いました。体育の授業でもそうそう見ないボールの軌道や足捌きだったのでクスクス笑わせていただきました。

監督を務めていたチームの不振で追い出されたロンゲンがサモアに半ば飛ばされる形でやってきて、チーム全体の杜撰さに呆れ果てていましたが、自分を見つめ直したりしてチーム指導に力を入れていく様子は鋭い剣幕が相まってコメディにも見えて良かったです。
公式戦の最中にチームの不甲斐なさにブチギレて帰ろうとするけれど、やっぱ自分自身も見つめ直さなきゃなという事で帰ってきて楽しもうぜ!ってテンションで盛り上がりまくる様子もまた暖かったです。

ファファフィネという第三の性を持つジャイヤが物語のキーパーソンになっていたのも印象的でした。女性になるためにホルモン注射を打っているので体つきも女性っぽくなっているけれど、完全に女性になってしまうとサモア代表にはいられないという悩みもありつつ、練習も最初は不真面目で、ロンゲンとぶつかり合う事も多かったけれど、お互い謝って解決して、友達くらいの関係性で物事を進めていったのが物語の流れをガラッと変えたなと思いました。
その後のエピローグでFIFAのお偉いさんまで駆け上がったというのが出て、本人の努力が実りに実りまくったんだなぁとちょっとウルっとしてしまいました。真っ向から性の取り組みを描いたのが清々しく、偏見なんてどこかいってしまうくらいに彼女は素敵でした。

真面目にスポーツ映画として観るとどうしても試合シーンのダイジェスト感だったりは気になるところですが、ワイティティ監督はそこを省いて選手と監督の関係性や成長を強く描いたんだなと思いました。

選手以外のキャラクターも濃くて、ロンゲンに面白いくらい懐く笑顔の素敵な少年や、頼りなさげだけど優しさでチームを包むコーチのエース、サモアのサッカー代表のゴールを望み続ける会長と、皆それぞれの形でサモア代表を応援している姿がとても良かったです。
サモアのロケーションも美しく、機会があれば現地に行ってみたい美しい光景に息を呑みました。

ワイティティ監督が最後を締め括ったと思ったら池に足を突っ込んで終わるという、それやりたかったがために神父の格好したんだなーと思うとなんだか微笑ましかったです。こういう遊び心全開なところに惹かれるんだろうなーと思いました。

良い作品に出会えました。観終わったあとハッピーになれる作品はなんぼあっても良いなぁと思いました。ワイティティ監督の次回作にも期待大です。
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