撮影のリッチさ、この題材をしっかり作り込み、クラブの中だけではなく、ストリートの場面もチープに見せない、そんな当たり前のことが高く達成されているだけで安心してしまうが、内容も冨永作品を見続けていて良かったと思えるようなもので、とても良かった。一人二役の池松壮亮は勿論、映画における怖いチンピラ像を刷新する森田剛や、高橋和也のアプローチが素晴らしい。ストリートのセッションが電車の音にかき消される場面などの映画ならではの接写のセンスと、ヌーヴェルバーグ由来の突拍子もなさが同居していて、他の日本映画では見たことない勘の確かさに溢れてる。これはもっと高く評価されてほしい。真夜中のある界隈のエキストラとしてすれ違う主人公2人の絶妙な距離感など、交わりそうで交わらない群像劇としても、監督のフィルモグラフィ中で最も上手く捌けていると思う。終盤のアンサンブルにおける登場人物のドラマの回収は呆気なく美しい。こういう日本映画をもっと見たい。
