ノラネコの呑んで観るシネマ

白鍵と黒鍵の間にのノラネコの呑んで観るシネマのレビュー・感想・評価

白鍵と黒鍵の間に(2023年製作の映画)
4.3
銀座のキャバレーでピアノを弾く駆け出しの博と、米国留学を計画中のクラブピアニストの南。
ある夜、博がヤクザのボスのお気に入りで、南にしか弾くことを許していない「ゴッドファーザー愛のテーマ」を弾いてしまったことから、夜の街が動き出す。
原作は、ジャズピアニストの南博の日記エッセイ。
コレは80年代にバークリーへ留学する前の話なのだが、映画は1985年とその3年後1988年の南博を、「南」と「博」に分け一つの夜に同居させるという奇策に出た。
85年と88年の大晦日がシームレスにミックスされ、怪しく蠢めく夜の街の住人たちを背景に、銀座にやって来たばかりの博と、クラブの「装飾品」としての音楽家のあり方に慣れ、ちょっとスレてしまった南を対比する。
まことにフリーダム、佐野史郎演じるピアノの先生が言うところのノンシャラント(無頓着)な演奏を、映像表現に翻案したと言うことか。
私は「odessa EDITION」で観たが、日本映画では珍しいくらい演奏シーンのボリュームたっぷり、聴き応えある作品だから、絶対音響設備のいい映画館で観るべき。
終盤の超カオスな展開も含めて、いわゆる「怪作」の範疇におさまる作品だ。
戯画的な部分はかなり人は選ぶだろうが、無味無臭の作品よりはよっぽど面白い。