このレビューはネタバレを含みます
この物語は、南博の物語。「南さん」と「博」の2人が存在している。同一人物のような、そうではないような。
でも、「南さん」も「博」も、お互いを探しているようにも見える。自分が自分を追い求めている。つまりは、彼らは自分探しの渦中にいるのだ、
「南さん」は、ジャズを演奏するのが楽しかったあの頃を。「博」は「伝説のピアニスト」のような、自分を示すような肩書きや実力を。演奏する場所を。
物語のラストは、どちらの「南博」も新たな出発を迎える。1人はさらなる夢を追ってアメリカへ。もう1人は、キャバレーの専属ピアニストに。
白鍵と黒鍵のあいだ、には、尊敬する先生の、タバコの灰が散らばっていた。どんどん汚くなるピアノ、でも、それでいいのだ、
先生が死んでからは、白鍵と黒鍵のあいだに、先生の面影を探していた、「のんしゃらんと」という教えの意味とともに。
アンサンブルのシーンは、「のんしゃらんと」が体現されていて、先生が幻のように現れていた。あまりに心地よくて、音楽っていいなと思いながら泣きそうになった、