木蘭

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩の木蘭のレビュー・感想・評価

3.4
 ウクライナ製児童(&親子)向け歴史教育(ソフトなプロパガンダ)映画・・・という感じの作品。

 第一次世界大戦後に西ウクライナ、物語の初めはポーランド、途中でソ連領になる街を舞台に、民族の違う3家族の物語を描くのだが、そこには昨今のウクライナの史観や志向・・・ウクライナ民族主義の高まり、ポーランド人とウクライナ人の和解、ドイツ人への許し、ソ連=ロシア、ロシア人への変わらぬ警戒と怒り・・・が色濃く繁栄されているので、それが適切か否かは別として、注意して鑑賞すべきかな。

 なお、劇中では分かり難いがウクライナ人のお父さんは・・・「ウクライナ民族主義者組織(OUN)」の闘士で赤軍との戦いで足を負傷しており、キエフに居れなくなったのでポーランドに逃げた・・・という設定があるらしく、単なるドイツやポーランド嫌いの人間では無くて、バリバリの愛国・民族主義者だし、お母さんが民謡を教えているのは極めて政治的意図が働いているハズ。
 因みに、OUNは反ソ連のみならず、反ポーランド武装闘争もしていたし、反ユダヤ的な思考の人もいたり、反ソの立場から侵攻を当初はドイツを歓迎していた・・・なんて部分は、劇中ではやんわりスルーされている。
 ホロコーストに関する描写もアッサリ目で微妙だよな・・・戦後、ポーランド人を追い出したのも含めて、ウクライナ人の関わりは、勿論描かれない。

 政治的な部分はともかくとして、民族の垣根を越えた愛情というテーマは崇高だし、脚本家の祖母の体験などをベースに作られた物語は興味深いし、丁寧に作ろうとしているのは分かる。
 分かるのだが、いかんせんテレビドキュメンタリーを作っていて劇映画制作は殆ど経験の無い監督の技量が低い。

 低予算で、限られたセットと貸衣装丸出しの軍服、少ないエキストラ、直接描かれない戦火は仕方が無い。音質が悪いのも我慢しよう(劇場の大音量だと辛いけど)。
 ただ余りにもステレオタイプに描かれるドイツ人やソ連人の描写、稚拙なドラマの繋ぎや演出などは残念。
 悪くは無いけど・・・テレビドラマって感じかな。

 個人的な見所としては、ユダヤ人の二人目の娘ちゃんが、ベッドでグテッと寝ている姿とか、演技と関係なく勝手に踊っている姿がユーモラスで可愛い。

 それとポーランド人お父さん・・・やっぱりカチンの森に行っちゃったのかな・・・。
木蘭

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