かしまっち

キャロル・オブ・ザ・ベル 家族の絆を奏でる詩のかしまっちのネタバレレビュー・内容・結末

4.2

このレビューはネタバレを含みます

第二次世界大戦下にあったポーランドのとある1つのアパート、そこへウクライナ人の家族が引越してくる
ウクライナ人、ポーランド人、ユダヤ人の3つの家族が住むアパートでは、初めはぎくしゃくしていたものの、音楽のレッスンを通じてウクライナ民謡であるキャロルを歌うことで国や人種、宗教を超えた友情で結ばれる
しかし戦争の悲痛な運命により3家族の絆は脅かされ始めた

ドイツ軍のポーランド侵攻を始め、ナチスによるホロコースト、
この映画は間違いなく戦争映画ではあるものの、大きな出来事の直接的な描写はない
家族の一人称視点で常に物語は語られていく
鑑賞においてある程度の知識が前提として必要なため難易度は少し上がるだろう

家族が一人ずつ欠けていく様や食料が次第に尽きていく様など、
戦時中の社会における家族が経験する、
何か得体の知れない大きな恐怖と隣り合わせの生活にフォーカスした作品だ
一人称視点だからこそ実現できるリアリティは高いライブ感を実現し、戦争の悲惨さをこれでもかと訴えかけてくる

しかし悲惨なことばかりではない、
過酷な現実を生きるための僅かな希望を対照的に強調している
常に幸せを願い続ける聖歌、子ども達の幸せを願う母親の強い意志は悲劇的な現実でも輝きを放つ
文化礼賛、母親礼賛の力強い映画でもある

そして奇しくも最後のソ連の侵略は、現代のロシアのウクライナ侵攻と重なる部分がある
戦争の脅威に晒され続ける家庭は現在進行形で存在している
歴史を学び今を知る、現状の知見を広げるためでも意義深い鑑賞だった
かしまっち

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