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ナショナル・シアター・ライブ「ライフ・オブ・パイ」のumisodachiのレビュー・感想・評価

4.5


今年のオリヴィエ賞演劇部門最優秀新作賞を受賞した作品。映画『ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日』の舞台化。(もともとは小説)

インドに住む少年パイ(通称)の父親は動物園を経営していた。目玉としてトラを購入したものの、政治的な理由から一家はカナダへの移住を決意する。動物たちと共に日本船籍の貨物船に乗り込んだが海難事故が発生。パイはボートと共に大海原に投げ出されてしまう。そこには動物たちも乗っていて……。

227日に及ぶ漂流の末にメキシコで保護されたパイが、日本からきた調査員によって聞き取り調査をされるという設定。なかなか話したがらないパイ、話し始めたはいいが荒唐無稽な話ばかりするパイに、日本人調査員のオカモトはイラつき始める。

なんといってもこの舞台の見どころは動物たち!単数または複数の人間によって生き生きと操られる動物たちは圧巻。また、機構を上手く使ったステージングも面白い。客席には子どもも多く(私も息子と鑑賞)、小さめの劇場に溢れるビビッドな反応が楽しかった。

とはいえ、ストーリーはまったく子ども向けではない。弱肉強食の残酷なシーンも繰り返されるし、そもそも展開がかなりシビア。さらに、(映画を観ている人ならばおわかりだと思うが)最終的には【物語】をめぐるかなり深い議論になっていく。10歳の息子も最後の方の「最初の物語と次の物語」という展開にはついていけなかったようで、後で説明したら感心していた。

ある島に上陸するシーンをどう表現するのか楽しみにしていたのだが、その箇所が完全にモノローグになっていたのがけっこうガッカリ。あの語りだけではあのシーンが含むものまで意識を誘導できないと思うが……舞台上で表現するのはかなり難しいだろうから仕方ないのかな。

どうしても説明的になってしまう部分はあるものの、ハッとさせられる瞬間も多かったので概ね大満足。息子ともたくさん議論できて良かった。




















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