MasaichiYaguchi

emptyのMasaichiYaguchiのレビュー・感想・評価

empty(2023年製作の映画)
3.6
中嶋駿介監督による全編35mm フィルム撮影の新作短編映画は、ラブホテルを舞台に、充たされた者と空虚な者との落差をファンタジックに描く。
ヒロインのアズサは子供を授かることを夢見ながら、夫が無精子症と診断されてしまう。
追い打ちをかけるように子供が出来ないショックから夫イチロウが自殺してしまい、アズサは失意の中に残される。
それでもアズサは、生活の為に職場のラブホテルで清掃員として働く日々を過ごすことになる。
アズサは、職場であるラブホテルで日々大量に捨てられる精子を見ているうちに徐々に大きな憤りを感じるようになり、据え置きのコンドームに密かに画鋲で穴を開け始めてしまう。
持つ者と持たざる者、コロナ禍で益々その格差は広がっているような気がする。
不妊治療に苦労する方もいれば、子宝に恵まれてもネグレクトや虐待をする親もいるし、共稼ぎ世帯では育児が心身共の負担になったりする。
空虚を充たすものは何かを本作は問う。