松原慶太

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語の松原慶太のレビュー・感想・評価

4.0
ウェス・アンダーソンがNetflixで同時に4本の新作を出した。本作は、ブラックユーモアに満ち奇妙な味わいの作家ロアルド・ダールを原作とした中編。わずか39分だが長編映画のような満足感がある。

ストーリーは、有閑貴族のヘンリー・シュガーという男(カンバーバッチ)が摩訶不思議な体験をしたあと、人生最後になにを悟ったか、というような話。

ヘンリー・シュガーが友人宅で一冊の本を見つける。その本には透視能力を身につけた男の逸話が語られている。そしてその男が超能力を身に付けたキッカケとしてインドの修行者との出会いを語り始める...。といったぐあいに、話は「入れ子」の構造(枠物語)になっている。

入れ子構造は「千夜一夜物語」などに代表されるように、古からの伝承文学の特徴であり、読者(観客)をフィクションに引きずり込んでいくような(続きが気になって仕方がない)効果がある。おそらく物語が口承によって伝えられていた時代の名残りなのだろう。

映像はいつものウェス・アンダーソン節の延長線上にあり、演劇的というか、動く紙芝居のような、ワンカットふうのナラティブで進行する。飛び出す絵本を眺めているような楽しさがある。
松原慶太

松原慶太