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ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のmat9215のレビュー・感想・評価

4.0
ロアルド・ダール原作の4連作は、近作『アステロイド・シティ』より好み。同作で顕著だった舞台劇の手法が極まっている。背景の書き割りが横移動し、あるいは、カメラがセットの中を横移動して場面転換する。また、登場人物の他に、作業服姿の男が無言で俳優をアシストする。さながら黒衣のごとし。俳優たちは基本的にカメラ目線で、会話だけでなく、おそらくは原作小説の地の文を喋る。地の文で自分や他の登場人物の動作が語られても、その動作が演じられないことが多い。たとえば、空中に浮揚したと語られる行者は浮揚などしていない。小説を映画化するのにこの手があったか。

4連作にはいずれも、物語だけでなく、物語を執筆中の作家が登場する。本作は4連作中の他の作品とは異なり、メタ構造に一段付加されている。執筆中の作家、物語中の主人公、そして彼が見つけたノートの中の物語。

などなど、ポップな絵作りだけではない、周到な仕掛けに満ちた4連作。
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