Ricola

ヘンリー・シュガーのワンダフルな物語のRicolaのレビュー・感想・評価

3.5
ロアルド・ダール短編作品とウェス・アンダーソンのコラボ。
突拍子もない不思議な世界を色鮮やかに表現するウェス・アンダーソンの手腕はさすがであるが、ただそれだけになっているように感じてしまった。

お金持ちの男ヘンリー・シュガー(ベネディクト・カンバーバッチ)が、あるインドの超能力者の自伝を読み、それをギャンブルのイカサマに使うものの…というストーリーである。
物語はまず、作者であるロアルド・ダールの語りから始まり、この物語の主人公であるヘンリー・シュガーが登場し、さらに彼の読むインドの超能力者の世界へと、ストーリーが三重構造になっている。


全体的に舞台上で繰り広げられているような演出が特徴だろう。演者はあくまでも1つの舞台で演技をし、あまり動かない。
大きな板に描かれた背景が動かされ、大道具が入ったり出たりすることで人物が瞬間的に移動したかのように見える。
他にも裏方の人間をあえて映すような演出が見られる。
登場人物のヘアメイクの変化の過程もそのまま画面から動くことなく映され、人物を右から左へ移動させるのも手動であり、あえてそれを見せるのだ。運転するシュガーも、動く映像を背景に屋内で車を動かして

また、物語の地の文をその場面ですでに他の役割を与えられている登場人物に語らせる。それも基本的にカメラ目線である。自分のセリフを言う際にも、「〜と私は言う」とカメラをじっと見つめる。その際に生まれる違和感が、この作品のシュールさの主な理由でもあるようだ。

こうだったらいいのになと思えるようなことを、ロアルド・ダールの優しさを通してわたしたちはまた夢を見ることができる。そこにウェス・アンダーソンのカラフルで自由だが規則的な演出が加わり、大胆かつお茶目な世界にさらにデフォルメされていてやはり楽しかった。
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