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STILL:マイケル・J・フォックス ストーリーのkamakurahのレビュー・感想・評価

3.5


『Back to the Future』シリーズで映画ファンなら知らない者のないマイケル・J・フォックスの現況を真っ直ぐ凝視したドキュメンタリー。そのパーキンソン病との格闘は、すでに世界的ベストセラーの自伝『ラッキー・マン(Lucky Man)』(2003年)等に詳しいが、その自著から20年、なお不治の病と格闘しながら、かかる現実をフィルムに刻み、世界発信する姿勢に、ただただ敬意を評したい。きわめて個人的なことになるが、大恩人が最晩年同じ病に苦しまれ黄泉へと旅立たれ、その実際を目の当たりにして、まだそう年月を経ていない自分にとって、この宿痾との対峙がどれほど過酷かを推し量ってあまりある。そして、かかるレビューでの評価点など何の意味も持ち得ない、とその無力と悲歎を痛感する。幼い頃から、ひたすら走り続けた、と本作であらためて知らされ、しかも齢近い世界的大スターが、いま、治療の一環とは言え、STILL、とどまれ、周囲から指導されるだけでなく自分自身の内側からそう言い続けなければならない。彼にとって最も重要な媒体を通しての赤裸々な心情吐露に、前半部のサクセスストリートパートはすっかり霞んでしまう。後半鮮明に映像となっている妻や子どもたちの深い愛情が救いである。かつて筆者自身の青春の一コマを映画を楽しく堪能することで彩ってくれた世界的スターの、宿痾と悪戦苦闘しながらも、諦めることなく、じっと未来を見つめ続ける「今」にエールを贈りたい。
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