KnightsofOdessa

The Girl and the Oak(英題)のKnightsofOdessaのレビュー・感想・評価

The Girl and the Oak(英題)(1955年製作の映画)
4.5
[クロアチア、水のない死の大地にて] 90点

大傑作。クロアチアを代表する映画監督クレシミル"クレショ"ゴリクの監督二作目。太陽が照りつける絶望的な傾斜の禿山を、重い水樽を背負って歩む黒ずくめの集団。ダルマチア地方の寒村へと向かう道を進む女性たちである。すると、集団から遅れていた女性が太陽の熱線に捉えられて転び、手で抑えるも虚しく破損した水樽から乾ききった大地へと水が零れ落ちる。そして、場違いなほど悠然と立つ一本の樫の木の前で、彼女の命もまた零れ落ちる。彼女の5歳の娘スミリャは村の他の家に引き取られた。彼女は美しい女性として成長するが、嫉妬深い義兄ヨシップは彼女の周りに男がいるのが気に入らない。山の麓にある村に暮らす病弱な青年イヴァンが彼女に近付いた時、ヨシップの嫉妬は爆発する。

本作品では、干からびた山が常に死のイメージで溢れている。序盤の母親の死からイヴァンの死、西部劇ばりの銃を持った探り合いからヨシップの死に至るまで、徹底した陰鬱さと容赦なさで人物たちを追い詰めていく。恐ろしいのは、死のタイミングで彼らの近くには必ず水があることだろう。水がないから死ぬのではなく、水があっても死ぬという絶望感、これを端的に表現している。
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