チッコーネ

私がやりましたのチッコーネのレビュー・感想・評価

私がやりました(2023年製作の映画)
3.0
1930年代が舞台とあって、監督印の明るく静謐で美しい画面は後退、ややくすんだフィルム調が印象的。
継父の職場では、アールデコな美術も登場。
リッチになったヒロインたちの出で立ち、そしてコクーンコートに身を包んだユペールのエキセントリックな衣装も良い。

前半は背景の転換が単調で、舞台劇さながら。
中盤でユペールがやっと登場するまでは、何度か眠気と戦った。
盛り上がりを迎えてからの脚本もそれほど斬新でなく、ナンセンスで古臭い風刺劇。

ユペールと監督は『8人の女』以来のコラボだが、本作でも唯一無二の存在感とコメディエンヌぶりを発揮。
同時に「ついに脇に回り始めた」という印象も受けたが、年齢を考えれば妥当かと思う。
劇中でチラッと出てくるダニエル・ダリュー×ビリー・ワイルダーの映画看板は、ワイルダー亡命前の作品だろうか。
監督はユペール同様、『8人の女』でコラボしたダリューの楽曲を、主題歌にも採用している。

しかし監督作をロードショウで観るのは、今年3作目…、何という絶倫。
そして原題『Mon Crime』を意訳した本作の邦題は、かなりキャッチーで良い出来(絶対に本作を観なさそうなチャラ男たちでさえ、チケット売場で「何これ」と反応していた)。