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いっちょらいのYKのレビュー・感想・評価

いっちょらい(2023年製作の映画)
3.0
主なロケ地は、福井駅前にある新栄商店街というディープスポット。高校時代に駅前を練り歩いていた自分は、ここで映画を撮ったらおもしろそうだといつも思っていた。そんな雰囲気のある場所で、主人公のテツは家族代々の中華料理屋を営んでいる。派手なパンツ屋、謎の猫カフェ、洒落た古本屋、登場する店はすべて商店街に実在するものだ。そして路地裏に突如現れるストリートアートの数々…。「ほぼ下北やん」と一瞬思った。が、下北系の映画に比べて、こっちはどことなく湿っぽい。鉛色の空の下、アーケイドで日が当たらない商店街では、地元民による妬み恨みが蔓延んでいる。諸事情により人生諦めモードであったテツも、お客さんや仲間に愚痴をこぼすことで日々の鬱憤を晴らしていた。そんな中、病気で寝たきりだった父親が「もう一度いっちょらい節を踊りたい」とテツにつぶやく。いっちょらい節とは、祭りで歌われる地元の伝統的な民謡だ。しかし、今年は財政的な事情もあり祭り自体の中止が検討されていた。父のため、そして自分のため、テツはこれまで、そしてこれからの人生を見つめなおす。祭り復活!地方創生万歳!「ご当地映画」としてはそんな結末が正解かもしれない。しかし、そうはならない展開にこそ好感が持てる。片山監督は伊達に福井映画を撮ってるわけじゃないと感じた。
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