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いっちょらいのechizenのレビュー・感想・評価

いっちょらい(2023年製作の映画)
4.6
民謡を題材にした御当地映画。と思いきや複雑普遍的な人間模様を描いた作品。御当地映画に有りがちな明るく楽しい、そして暖かな感動は微塵も無い。
日々の生活は決して楽ではない。重い不安不満がある。そこに押し潰れそうな人は少なくない。主人公テツヤもそんな男性。しかしそんな中にも幸せが存在する。それに気づけない人も又少なくない。テツヤもそんな日々を生きている。

東北の震災後、被災地にボランティアで入った事がある。地元の人と活動を共にして、帰ろうとした時だ。地元の方が手を振り見送ってくれた。彼等は笑顔を作ろうとするのだが、笑顔にならない。避難生活の大変な状況と度重なる心労で、憔悴し切り笑顔が作れないようだ。周辺の状況から察するに、大事な人を亡くした可能性もある。
その大事な人と気まずい事があっても「ごめん」とは二度と言えない。朝「おはよう」とすら言えない。鑑みて自分は凄く幸せだと思った。40を超えて初めて気づいたのだ。

幸せってなんやろね。

幸せは何ものでもない。しかし存在するのだ。答えを見つけようともがくテツヤ。
観終えて、多くの事に思いが巡る。

不思議な映画。
ファンタジー要素皆無の映画だが、究極のファンタジー映画だ。
スコア5を挙げたいが、片山享監督の次回作にとっておこう。もっと凄い作品に出会えそうだ。

映画館でプレゼントされた黒龍の「いっちょらい」は美味しい日本酒。
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