セガール幹事長代理

首のセガール幹事長代理のレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
5.0
織田信長が天下統一事業に王手をかけた戦国時代中期。
全国の反信長連合が織田家に総攻撃をかけた俗に言う「信長包囲網」真っ只中、摂津の有岡城・城主である荒木村重(あらきむらしげ)が突如として信長に謀反を起こし逃亡した。
「村重を捕らえた者を織田家後継者とする」という信長の一言で、欲に目がくらんだ武将たちが足を引っ張り合う話。

「荒木村重って天下人に首を狙われるほど大物か?」というのが、歴史マニアが共通して抱く最初の認識だと思うが、開始10分で腑に落ちたし、何より村重の人物描写が素晴らしいの一言。
映画では語られないが、村重は自身を「道に落ちた糞のような存在である」と評し、後に荒木道糞(どうふん/みちくそ)と名乗った、という逸話があり、作品内でも道糞の名に恥じぬ、武士としてのプライドそっちのけ、自身の生命に対する異常な執着心を見せつける。

というかそんなことは些末なポイントで、よく世界一かっこいいハゲはブルース・ウィリスだとか、いやいやジェイソン・ステイサムだとか、日本人ならケン・ワタナベだとか不毛なやり取りが繰り広げられてるけど、鑑賞後は「世界一のハゲ=明智光秀」となること請け合いである。
私はスマホとPCの待受を明智光秀にしてるし、本能寺のwikiを親の顔より見てるし、もし入れ墨掘るなら三角筋に水色桔梗(明智家紋)にしようとするぐらいの金柑オタクだけど、改めて彼のことを好きになりました。
とにかくみっちゃんは真面目なんですよ。努力家で、仕事も勉強もそつなくこなすんだけど、コミュ障で冗談通じないし、酒も飲めないから上司にイジられても「それがしに至らぬところがございました」って言って余計に空気悪くするタイプなんです。そんな苦労人の真面目なおじさんがはっちゃけちゃうと取り返しのつかない事になるよ~、っていう令和まで脈々と受け継がれる普遍的な運命を象徴するかのような存在なんです。
本作の主人公はサルでも信長でもなく、間違いなくみっちゃん。とても完成度の高い、光秀のPVに仕上がっています。

最初から最後までずっと私はニヤニヤしてたし、大満足だったし、何ならテンションあがってパンフレットまで買っちゃったんですが、強いてケチをつけるとしたら合戦がお粗末すぎる点です。
酷すぎて笑いました。人物描写が100点満点中500点なら、合戦は5点てとこです。


※エンドロールに劇団ひとりって書かれてたんですが、どこにいたか分かった方はコメント欄で教えて頂ければ幸いです。