クロスケ

首のクロスケのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.3
黒澤明の『乱』と『アウトレイジ』の融合と化学反応を期待していただけに、正直、少しハードルを上げすぎたと反省しています。と同時に、北野武の集大成的なものを感じ、ある意味で納得もしました。

北野監督を慕うオールスターキャストを総動員して描かれる生涯のテーマ「暴力」と「笑い」。
やはり彼には、自分はコメディアンであるという自負があるのでしょう。いつも以上に「狙った」笑いが多かった印象です。芸人役を演じる木村祐一が主役級の活躍を見せるのも、あの役に何かを託しているからなのかもしれません。

しかしながら、「映画監督・北野武」の素晴らしさは、哀しみや虚しさの中から滲み出る笑いにこそあると思っているので、このように露骨にウケを狙おうとされると、少々冷めてしまいます。

殺伐とした暴力描写の隙間を縫うようにコント風の笑いが差し込まれるのですが、どうも演出がおざなりで気持ちよく笑えません。
ショットにも精彩を欠き、戦闘シーンも単調で、物語の展開に退屈さを感じたことは否めません。

ただ、まもなく喜寿を迎える年齢になって、こんな本気なのか、冗談なのかよくわからない映画を撮る大胆さには驚かされます。この先、何本撮れるかわかりませんが、期待を裏切る映画を見せてくれることを期待しています。
クロスケ

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