一夏

首の一夏のネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
3.7

このレビューはネタバレを含みます

長かった。
群像劇的だが、歴史に基づく必要があるために大きな危機が全員に迫り来るような作りにはできないので、クライマックスというクライマックスがなく長く感じたのだと思う。

が、メッセージ性がとてもよかった。今のタイミングでこのメッセージは良い。

「首」に踊らされるものたち。阿呆。
争いは、滑稽なことなんですよ。皆欲しいものは、本当は「首」ではないのだから。

静と動の使い方が良い。すごく。
自然が美しかった。
人間の愚と自然の対比が良い。オープニングの川と死体の対比は大変に美しい。
最後の光秀自害あたりからの森のシーンは光が美しく、静謐な空気すら伝わってきて一連が絵画のようだった。茂助串刺しにされるところとか。

終わり方痺れるぅ。めちゃ好きだった。首になんか興味ねんだよ!という、最大の世界への、皮肉。
それだけではなくて、一生懸命に生きた者たちを愛を持って描いてくれてもいたから、首に対する人々の思いが多角的に描かれていてよかったなー。どのキャラもキャラ立ってたなあ。よかったなあ。一筋縄では行かない性格・関係性。騙し合い。信長と光秀の関係性えぐい。その2人にしかない関係の形というのは大変魅力的。でも信長はキャラとしては、暴君っぷり良かったんだけど現代感強すぎてなんだかな。もう少し厚みが欲しいものだったが。
村重はまり役すぎたよなあ。最高。

なんか西島秀俊が出てるからなのか男色?の感じがBLっぽく見えてしまって惜しかった(良い役者さんなのだけど)。顔知りすぎてるのもあるだろうけど、愛の他にもドロドロとした感情(それは主従とか義理とかなにか形式めいた一種の儀式のような)がもっと見える演出が見たかったかも。

白塗りの狐のひとは何。ビジュのインパクトえぐくて面白くなっちゃってた。日本の儀式について、多く取り入れていたがいまいち神聖さや本物の箔のようなものを欠いていて惜しいような気がした。それっぽいだけというか。
それに関して言うと、衣装がなんかちゃちく見えてしまうのは何だろう。使用感のなさというか。

生きる死ぬに関することも良い。死にたくないのに簡単に殺される人もいるのに、早く死んで楽になりたいと祈祷する人もいる。地獄とはなんだろう。あの世とは。
信長が舞を見ながら、現世のやつら皆殺しにして地獄で自分で首を斬ればどれだけ清々するだろうなあ、という旨のことを言っていて、ここ含みがありセリフとして凄く好き。良い。もうちょっと分かって言って欲しかった、響いてこなかった。舞もちょっといまいちだったし。なぜか。


音楽自然で良かった。

自然の魅せ方・日本様式美的表現は、どことなく黒澤明の映画を思い出した。


武士道、ちゅうか分からんが(覇権争いというか男性社会的な構造というか)そういうのに対する、カウンターパンチ。北野武はそのど真ん中にいる人なんだと勝手に思い込んでいたから、こんな内容を作る人だと思わなかった。ど真ん中にいたからこそ、描けたのだとも思うが。
素晴らしいと思う。
一夏

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