かえるま

首のかえるまのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
5.0
社会性とエンタメの両立。グロテスクと美しさの両立。残虐と滑稽の両立。

戦国時代の残虐な行為をR15指定で映す本作だが、真に残虐なのはそれを外から気楽に見ている秀吉が体現する「無邪気な残虐さ」だろう。
それはTVで流れる紛争の話をエンタメとして消化してしまう現代を表していると思う。

本作は織田信長や明智光秀などの血で血を洗うような戦いの場面と、秀吉が黒田官兵衛と秀長と3人でコントのように謀略を巡らせる場面を交互に映す構成になっている。

この構図はまるで「世界まる見え」などのバラエティ番組で、光秀たちのVTRを観た後、スタジオでたけしがコメントボケをしているように映る。
残虐な世界を一歩引いた位置から気楽に見る秀吉と、テレビの中の悲惨さを茶の間でみる視聴者をかけているのではないだろうか。

「アウトレイジ」とバイオレンスという括りでは同じようだが、本作の場合、「TVの中の暴力をお茶の間から笑ってみるグロテスクさ」を浮き彫りにすることが狙いではないか。

作品全体のビジュアル、演技もかなりのもので、劇場では巻き戻しできないのがもどかしい。パッケージ化されたらもう少しゆっくり観てみたい。

なお、難点を言うなら、やはり刺激が強いことだろうか。バイオレンス色が強い、しかも3時間の長尺の最初から最後までこの調子だから、ちょっと辛い時もあった。精神的に余裕がある時に観たい映画。
かえるま

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