オーケンシールド

首のオーケンシールドのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.7
北野武の創造力と時代劇の融合。
戦国時代の乱世を活きる侍の恍惚な喜劇。
貪欲に天下を目指す武士が繰り広げる戰。

天下統一へ邁進する織田信長。家臣・荒木村重による謀反。村重と親交の深かった明智光秀が匿った嫌疑に対して、忠誠を誓う光秀。家臣に対して成果を挙げた者を後継ぎ候補に確約を宣言する信長。一方、有岡城で忍びの曽呂利新左衛門が村重を拘束。千利休を仲介に光秀へ村重の身柄を引き渡す。虎視眈々と天下統一を目指す羽柴秀吉家臣の策略。村重の謀反へ加担したと虚偽の申告で駆り立てる徳川家康討ち取りへの筋書き。家康に憤怒した信長は光秀の好物鯛の塩焼きで毒殺を企てるも失敗。信長詰られ暴行を受ける光秀は忠義から一転、復讐のため本能寺への謀反。信長の死後、光秀討伐へ心血を注ぐ秀吉軍。行方を晦ます光秀に痺れを切らして血汚れた〈光秀の〉首を蹴飛ばす。

北野武監督が描く戦国乱世のカオス。独自の解釈で展開する物語の奇抜さ。武士と百姓それぞれの境遇から成る人間の二面性(忠誠と欲望)を快活に魅せた新感覚の時代劇。特に光秀と村重の性交など時代劇にそぐわないシュールで滑稽な演出が面白い。一筋縄ではない北野節が健在だった。血生臭い北野組俳優陣の中、特異な雰囲気を醸し出す小林薫の家康が推し。生涯現役を宣言する世界の老巨匠たちと今後も無理なく競作して欲しいと勝手に思った。
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