おりい

首のおりいのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.9
通常上映、IMAX上映で鑑賞。

 IMAX上映、良かった!(生々しさ増し…) 「もうちょい…!」な印象だった合戦場面は低音がしっかりと聞こえ、飛び交う矢の音は鋭くなり、「合戦」らしさが増していた。最初の鑑賞では全く聞こえていなかったような小さな、細かい音も耳に届いたりして楽しかった。
 色彩、鮮やかさと深みが通常上映よりも段違いという印象。特に竹林の場面での緑の鮮やかさ、そして衣装の美しさ!! 皆素敵なデザインのお召し物を……おしゃれだなあ! 官兵衛の陣羽織とか。

 首に始まり首に終わる。登場人物は大体狂っていて、皆、血や欲や泥や金や愛やこの世のありとあらゆるものに塗れて生きて死んでいた。
 画になる格好良いカットとか勿論あるんだけど、登場人物達は格好良くない。時代劇、特に戦国時代の武将達はヒーロー的に描かれることが多いし自分もそれに慣れ切っていたけれど、「首」はそのヒーロー的なものが微塵もなかった。ひたすら生々しくてえげつない。

 秀吉は良くも悪くも「ビートたけし」。というか大体本人じゃん?!と。正直周囲から浮いているような印象だった。けれどもそこが、周りとは違う「百姓出の秀吉」とマッチしていたというか。秀長・官兵衛とのやりとりも何だかゆるくて時代劇ぽさがないんだけれど、つい観てしまった。

 加瀬亮の信長は「絶対関わり合いたくない」、暴力的で最悪な恐ろしい人なんだけれど、バリバリの尾張弁のリズム感もあってどこかコミカルにも映る(秀吉が表の道化なら、この信長は裏の道化みたいな)。ただ忠誠心を試したい確認したいだけ、自分が孤独であることをどこかで理解しているような……単に暴れているだけではない、そこに別の何かが透けて見えるようなところが結構好きだった(二回目の鑑賞で特にそう感じた)。加瀬さん、目がよき……!
 西島秀俊の光秀は観ているこちらが全力で心配してしまうほどのやられっぷり、苦労のしっぱなし! しかし不思議なことに、打ちのめされて堪えている様子があまり感じられず。最後のあの表情を見て、一番狂っているのは光秀なのでは?と思った。西島さんの演技良かったな〜。

 観る前から気になっていたのが、衆道、男性同士の絡みの描写。感想やレビューに目を通して感触を掴みつつも「でもやはり嘲笑の対象みたくなっているのでは……」と思っていた。いざ実際に鑑賞したら、腑に落ちた、しっくりきたというか。男同士の性も愛も憎しみも茶化すことなく真正面から描かれていた。と私は思う。

 秀吉秀長官兵衛たち三人のトリオ漫才っぽさ、服部半蔵vs斎藤利三の戦い(何故跳躍…)、やり過ぎってなるくらいの安国寺恵瓊等々……「何でそうなった?」「どういうことなの」という箇所もたくさんあるけれど、色んなものが絶妙な(ともすれば崩れそうな)バランスで組み合わさった、変な映画だった。変なのに作品としてどしっと成立してしまうのは、「監督:北野武/役者:ビートたけし」の力や魅力なんでしょうか。

 変、でもそこが好きだなー!!と感想書きながら気持ちを噛み締めました。好きだな〜と感じるとは思っていなかったのでめちゃくちゃ驚いている……。


 強烈な印象ばかり残していくキャラクターばかりだったけど、そんな中でも一番印象に残っているのさ津田寛治さん演じた為三でした。
おりい

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