かさま

首のかさまのネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
3.8

このレビューはネタバレを含みます

羽柴陣営はビートたけしの戦国コントだ…と思った。徳川陣営もコントだ…と思った。
後々天下を取る二人は信長の跡目争いに付随する愛憎関係、というかセックスの関係からは切り離されているが、そのかわりずっとコントをやっている。
羽柴・徳川の仲間内も男同士の絆が無いようには見えないが、少なくとも映画の画面内では主従はセックスではつながっていない。そしてどんなに人を殺していようともコントなので主従の仲もなんか可笑しくて和やかに見てしまう。
信長の跡目争いに関わる明智光秀、跡目争いからは脱落しているが信長を出し抜き生き残りたい荒木村重は、出世や生存の駆け引きの手段としてセックスや恋愛がある。信長から光秀への感情と、光秀と村重の間の感情は恋愛感情なのだろうが、権力闘争と強い情愛が混じり合い、恋愛関係でいることと自分の命をつなぐことが同等のこととなって陰惨である。
秀吉は百姓出身だから侍の恋愛関係が分からないと言ったが、百性だから分からないというわけでもないと思う。茂助は侍になって立身出世したいという望みを持っている元百姓だが、侍となる道が拓けるたびに見るのは為三の幻影である。出奔している間に家族が殺された際には笑ってすらいたが、己の出世欲のために殺した為三は後ろめたさを生じさせるらしい。出世欲と男への情を持ちながら動いているのは百姓の茂助も同じで、もし茂助が侍大将やら征夷大将軍やらになったとしたら、やっぱりセックスのつながりと出世の駆け引きがない混ぜになった武士になるんじゃないかと思う。
出世の道がセックスの相手になるかコントの相方になるかしかない。歴史での勝者は秀吉と家康なので、この映画ではコントやれる奴のほうが強いんだなあと思った。仕事の関係にセックスを持ち込むのはやはり良くない。
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