CANACO

首のCANACOのレビュー・感想・評価

(2023年製作の映画)
3.5
原作未読。北野武原作・脚本・監督作品。見ながら思い浮かんだのは、これまでの武/たけし作品の数々、ときどき福田雄一監督の『解釈・三國志』(2020)、あとはポール・バーホーベンでした。まとまりはなかったと思いますが、楽しく見られました。

まとまりがないと感じた理由は、いろんなたけし映画の雰囲気が混在している(役者の演技ムードが統一されてなかった)のと、現代と昔の言葉遣いが混在しているからだと思います。

<あらすじ>
天下統一を掲げる織田信長に仕える羽柴秀吉、明智光秀、滝川一益、丹羽長秀、宇喜多忠家ら家臣が集められ、謀反を起こしたうえ姿を消した荒木村重の捜索を命じられる。

そこから始まる、1578年の有岡城の合戦から、1582年の備中高松城の合戦〜本能寺の変〜山崎の合戦(清須会議の直前)までの、戦国武将の戦いを描いた物語。

時代劇版『アウトレイジ』だと思って見るとがっかりします。首はバンバン飛ぶしバイオレンスだけど、『その男〜』や『アウトレイジ』シリーズのような、背筋がゾクッとする恐怖、透明なピアノ線で首切られそうな張り詰めた緊張感はなかった印象。ビートたけし原作・出演作品の『教祖誕生』(1993)や、ビートたけし監督作品の『みんな〜やってるか!』(1994)まで思い出すような、“ビートたけし”色強い演出だなと思いました。

<あらすじ>
天下統一を掲げる織田信長に仕える羽柴秀吉、明智光秀、滝川一益、本多忠勝、丹羽長秀、宇喜多忠家が集められ、謀反を起こしたうえ姿を消した荒木村重の捜索を命じられる。

そこから始まる、1578年の有岡城の合戦から、1582年の備中高松城の合戦〜本能寺の変〜山崎の合戦(清須会議の直前)までの戦国武将の戦いを描いた物語。

加瀬亮さんが一番『アウトレイジ』色があった印象(岸部一徳さんも)。そのほかの役者さんは誰も……?『アウトレイジ』感なかったかもしれない。大森南朋さんは、受け答えがうますぎてガダルカナル・タカさんとダンカンさんのように見えました。織田、羽柴、徳川の各チームで演技のムードが全然違った印象で、織田は『アウトレイジ』、羽柴は『みんな〜やってるか!』、徳川は武でもたけしでもない時代劇作品のようでした。
味のある小林薫・家康と、たけし節と乖離してカッコ良すぎる桐谷・半蔵は、(北野武映画のムードはなかったけど)個人的にアリでした。
書き出すとキリがないですが、西島さんの光秀は納得感があり、中村獅童さんは一番バランスが取れている(武とたけしを中和している)印象を受けました。あとアマレス兄弟のフィジカルさとホーキング青山さの存在感、よかったです。

私は楽屋でやるミニコントのようなものは好きな映画ではないので、そういう感じが出てくると『解釈・三國志』みたいだな〜とテンションダウン。ただ本作は、アドリブでも単純に面白いと笑ったシーンがあったので、映画ではないなと思いながらそれほど嫌ではありませんでした。
下町生まれの芸人というアイデンティティがあるたけしさんなので、三谷幸喜監督の『清須会議』(2013)、『解釈・三國志』に対抗して笑わせたくなったのかなあ。

簡単に殺す、死を重んじない、滑稽なほど生首を粗雑に扱う“軽さ”は気にならず、ポール・バーホーベンの『スターシップ・トゥルーパーズ』(1997)を思い出しました。
現在85歳、第二次世界大戦体験者のバーホーベン氏は、『スターシップ〜』で滑稽なほど簡単に死んでいく若者たちを描き、戦争を美化する馬鹿馬鹿しさを見せていたのですが、現在76歳のたけし氏は「アメリカ海兵隊が南ベトナム解放民族戦線の兵士を簡単に撃ち殺す映像」を見たことがあるらしく、そのショックが大きく、死の描写に影響を与えたようです。

一番残念だったのは首そのもので、あれだけ首をバンバン映すなら、もっと生々しい首にしてほしかったなあと。ドリフのコントやスケキヨのような“ゴムのような質感”で、死を感じられず。コント感が増したと思います。

追記
武/たけし氏が影響を受けたと思われる、さまざまな作品の要素も受け取れる本作。戦シーンは黒澤明の『七人の侍』(1954)、男色は大島渚監督・ビートたけし主演の『御法度』(1999)の要素もあるし、石井隆監督・ビートたけし出演の『GONIN』(1995)の要素もあると思いました。
『GONIN』では殺し屋・京谷一郎を演じていて、舎弟とサディスティックな恋仲にある設定なのですが、織田信長の光秀に対する振る舞いは京谷を思い出させました。
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