ちゃ鍋

首のちゃ鍋のネタバレレビュー・内容・結末

(2023年製作の映画)
3.2

このレビューはネタバレを含みます

服装の赤と青の対比を紫の光秀、赤の村重、青の信長の愛憎関係として解釈できたのが面白かった。最初光秀と村重の愛憎(+光秀に懸想する信長)として見ていたが、知人との会話で光秀の信長への愛憎(+村重に信長に重ね合わせて同衾する光秀)という構図でも読めると指摘され、読みの多様性への気づきがだいぶアツかった。しかし、このような考察はややクィア批評寄りの見方なのかもしれない。

農民と武士の首の捉え方の違い、農民のシニカルさもよかった。とはいえ好きかと言われると微妙だが。主題である「首なんてただのモノでしかない」というのを最後に明言してしまっているのが残念だった。それまでに散々示唆的に描いてきたのだから、わざわざ台詞として出さなくてもよかったのでは。こういう点はエンタメ的と言えるかもしれない。信長の敦盛を能の舞台で表現し、実際に出来事として起こる本能寺自体はあっさりと終わらせているのも武士のマチズモや美学を皮肉る表現方法としてよかった。

また、光秀のみ武士らしいドラマチックな死を遂げる(描かれる)ことが許されているのに対し、他の武将たちは唐突、冒涜的ともいえるほどあっさりと死んでおり(この点が大河と異なる)、光秀の特権化があるのではという知人と話をした。他の大河においても、光秀をある種好意的に描いたり、イケメンに描いたりする印象があり、これはなぜなのか。
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