ぴあ高校生だった

テノール! 人生はハーモニーのぴあ高校生だったのレビュー・感想・評価

3.2
(記録として)
 市井の無名の若者がオペラ歌手に、というなんかにあったようなシンデレラストーリー。しかしそこはさすが本場フランス パリ オペラ座のものは深かったです。
 そもそも主人公は移民の家系か、兄貴は半グレ地下格闘家、本人は口汚いラッパーと、とうていオペラの世界とは似つかわしくない者として描かれていました。主人公は同時に大学で会計学も学んでいて、中々の努力家で、現実的に寿司屋の給料にも関係する真っ当な道です。
 でも秘密裏に進めているオペラの道に進むとなると、それまでの住んでる世界のほぼ総てを一変させないといけないんですね。必ずボロが出てしまう。苦悩をよく描かれていました。

 個人的な感想ですが、生まれも育ちも違うイケメンお坊ちゃんと、彼の特権でしか上がれないオペラ座の屋根に上るシーン、良かったです。なんか70年代~80年代のパリの麗しさが、こんなご時世でも残っているんだなと改めて感じました。

 最後にこの映画には「日本」がふんだんに出てきます。そもそも主人公はフランス流「出前寿司」でアルバイトし、その配達先がオペラ座でした。本格的オペラに開眼したCDは「蝶々夫人」、収監中の兄貴の言い訳に「日本旅行」、などなど日本が遠い不思議の地として描かれていました。
 対比して、一方で新興の韓国は実務面でグイグイ出てきて、先生を自国に誘致までするのに、なぜか冴えない役回り。人気がありません。
 現代フランスの社会の見方が垣間見られ、勉強になりました。

 (記録として)にしたのは、一般的な魅力を打破できていないので、評価が高くはないからです。悪しからず。