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若き仕立屋の恋 Long versionのmizukiのネタバレレビュー・内容・結末

若き仕立屋の恋 Long version(2004年製作の映画)
4.5

このレビューはネタバレを含みます

これとても好きです私。色気のある作品。
品のないエロと品のあるエロ、どちらも描かれていたのがとてもいいな〜〜。
「エロス」が追求されすぎて、チマキをエロく巻くシーンがあって、さすがに今何を見せられてるんだろう?ってなった。おもしろかった。チマキってエロく巻けるんだね。

一番好きなシーンは、ドレスを仕立てるために採寸するシーン。「私って太ったかしら?今(ウエスト)何インチ?」って聞く場面。もとは23インチだったけど、測ったら2サイズアップしていて25インチ。そこで仕立て屋は気を遣って真実を言わず「24インチです。」と答えると、「じゃあ、元のサイズ(23インチ)でお願い。痩せるわ。」と返ってくる。
…シーンはそこで終わるんだけど、結局どのサイズ感で作るんだろうって想像を掻き立てられるのがとてもよい。たぶん指示通り素直に23インチ、では作らないと思うんだよね。かと言って、「ドレスを綺麗に着るために痩せる。」って言われているのだから、25インチでも作らないと思うんだよね。24インチか、23インチと24インチの間くらいで仕立てて、「23インチで仕立てました。」って言うかつ"23"のラベルを付けるんじゃないかと思う。もしそうだったら、というかあの文脈的にはそうだから、乙女心を傷つけずかつ美しく着れる服を作る最適解じゃん…って。
ハンドメイドの古着とかで、表記のサイズの割に身幅緩いなとか細身だなとかよくある。そういうドラマがあるのかもしれないって思うと、ハンドメイド古着ってロマンがある。私じゃない誰か一人の体に合わせるためだけに作られた服、いい。


私にしては珍しく下調べをしていきました(普段はほぼ調べない 予告もなるべく観ない そんなに頭よくないしアカデミックさとか解釈の正確さとか自分に求めてないし求められてもいないから)。香港でSARSが流行ったことで、「触れたら感染するかもしれない」という考えが常に付きまとっていることを監督は実感されていたそうです。触れることが制限されていたからこそ、触れることに向き合いたくなったんでしょうね。コロナを経験した私たちにとっても、他人事とは思えないですね。
だからこそ、あそこで無理やりしたキスがすごく好きだった。事前情報がなかったらよくわかんなかったであろうシーン。好きな人にSARSを移したくないからキスをしたくないし、好きな人からもらうSARSでなら死んでも構わないと思うからキスをしたい。
…コロナ禍入りたてのことを思い出した。コロナが流行って2,3ヶ月の時、誰とも会ってはいけないみたいな雰囲気があった。あの頃、「コロナが落ち着いたら会おう」は、「いつか会おう」と同義だろって思ってた。人との繋がりもっと大事にしろよって思ってた。残酷にも、大事な友人が選別されるきっかけにもなった。色々会い方を考えれば、あの時期だって安全に会うことはできた(もちろん専門家の意見がある程度まとまった後じゃないと動いちゃダメだけどね)。屋外とかで会ってた。あと、ほぼ外気の飲食店とか。
試行錯誤して会うのは当たり前なんだけど、正直大事な人からもらうコロナで死んでも、しょうがない。死ぬのは嫌ってだけ。あのキスシーンは、SARS流行時のそういう気持ちを表していたんじゃないかなあと思う。ブレイクスルー感染とかもきっとあるから、周りの人のことを考えたら確実にダメだけど。濃厚接触を気にしてたら好きな人に触れることもできないじゃん…という気持ちはめちゃくちゃわかる。
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