みゆ

若き仕立屋の恋 Long versionのみゆのレビュー・感想・評価

若き仕立屋の恋 Long version(2004年製作の映画)
3.5
一貫して“手”にまつわる物語だった。服に針を通すのもアイロンをかけるのも畳むのも全部手。職業的な道具として、時に性的なモチーフとしての手の使い方が秀逸。ある場面で主人公が「あなたのサイズはこの手が全部覚えています」と言う所、切なさと色気がすごく良かった。英題『The Hand』繊細なドレスの上で動く指輪が似合う彼女の美しい手に見惚れるが、それに触れる欲望の指や、ぽんと生けられている花に悲しくなる。まるで枯れを知らないような花。外の音のカーテンは優しい、体中から滲み出る雨の音。せめてさよならの時には、ここには2人だけと思いたい。何というか、琴線に触れる、感性を震わせる映画。王家衛特有のリズム感とか、映像の湿度とか、そういうものに心が震える。真珠の光のような静けさ、奥底に流れる溶岩のような熱さ、観れば観るほど王家衛の美学が体に染み込んで頭から離れないような。
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