えりー

キリエのうたのえりーのネタバレレビュー・内容・結末

キリエのうた(2023年製作の映画)
5.0

このレビューはネタバレを含みます

とても良かった。
岩井監督の作品は初めてだったが、松村北斗くんが出ると知り観ることを決めた。

作中通してずっとアイナさんの歌に心を打たれた。アニメの主題歌等で歌声は知っていたが、こんなにたくさんの歌を聴けるとは思っていなかったので嬉しかった。
特徴的な声としゃくりが、不安定そうで儚そうでいつかフッと消えてしまいそうな、それでいて確かに心に引っ掻き傷を残していくようなそんな声質でとても印象に残ったし、キリエのイメージととても合っていて良かったと思う。

イッコが髪の色や服装を毎日変えているのはそういうものが好きなのだろうなと思っていたが、後半に出てくる事実によって印象がガラリと変わった。
そういう服が好きなのもあるのだろうが、きっと騙していた男の目から逃れるための変装だったのだろう。
"女"ということを使ってお金を稼ぐのは嫌だと地元を飛び出した女の子が、結局女という事実を使って金稼ぎをしていたことに少し落胆したが、正当に稼いでいるわけではなく騙し取っているということから、ある種の大きな括りとしての"男"へ対する復讐なのだろうかと思ったりもした。

時間軸がコロコロ変わる見せ方が面白かった。
姉の希(きりえ)の過去の姿と妹である瑠花の現在であるシンガーソングライターキリエをアイナさんが一人二役をしたことで、夏彦が2人を重ねて見て罪悪感に苛まれている様子が視聴者側にもわかりやすくなったと思う。
あのシーンの「許してくれ」にいろいろな思いが込められていると感じ心が痛かった。
過去に抑圧からの反発心から犯してしまった罪にいつまでも囚われていて、きっとこれからもキリエを見るたびにその罪悪感に押しつぶされるようになるのかもしれないけれど、住むところのないキリエをきっと迎え入れて今度こそサポートしながら生きていくのだろうし、それによっていつか、夏彦の心の傷が癒えるといいなと思う。
あと北斗くんの弾き語りが聞けて嬉しかった。


作中でも度々出てきた、雪のなかでの昔のイッコと瑠花の公道が微笑ましくて青春で眩しかった。深い雪をザクザク笑いながら歩いたり、降り積もった雪の上に寝っ転がったり。雪の降らない地域に住んでいる身としては馴染みのない光景だったが、きっと2人にとっては何気ないいつもの風景だったのだろうが、私にとってはいつまでも忘れられない景色だった。
えりー

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